循環器内科

循環器内科とは

循環器内科と聞いても、どんな病気をあつかう診療科なのかわからない方も多いのではないでしょうか。循環器とは、血液を全身へ送りだす「心臓」、血液の通り道である「血管」などの器官のことをいいます。そのため、主に「心臓」や「血管」に関連する病気を診る診療科となります。
心臓や血管の病気の多くは、血管が硬くなる動脈硬化が原因です。そのため、動脈硬化の原因になる、高血圧症・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病をコントロールし、心臓や血管の病気を予防することが循環器内科医の重要な役割になります。
心筋梗塞や不整脈などの、命に直接かかわる緊急性の高い病気に対しては、心臓カテーテル治療やペースメーカー手術なども行います。
心臓
こんな時は循環器内科にご相談ください。
  • 胸の痛み、胸の圧迫感・息苦しい
  • 動悸、息切れ
  • 脈がとぶ、乱れる
  • ふらつき、めまい
  • 意識がとぶ、目の前が真っ暗になる
  • 足のむくみ、しびれ
  • 歩行時の足の痛み、だるさ
  • いびき、昼間の眠気
  • 血圧、コレステロール、血糖、尿酸が高い

循環器内科で対応する主な症状・病気

症状から探す

病気から探す

胸が痛い・息苦しい

胸が痛いと言っても、「胸がしめつけられる」「胸が圧迫される」「胸が重たい」「心臓をギュっとにぎられる」「胸がチクチクする」「胸から肩や歯にかけて痛くなる」「息苦しい」など、症状の訴え方は人によってさまざまです。
原因もさまざまですが、心臓や肺が原因の場合は、緊急性の高い病気であることが多いため、症状が気になるときは早めにご相談ください。
胸が痛い

胸の痛みをともなう病気は?

  可能性のある病気 主な特徴
心臓・血管の病気 急性心筋梗塞 突然の強い胸の痛みが30分以上持続する。
冷や汗、吐き気、嘔吐をともなうこともある。
胸だけでなく、肩・背中・顎・歯・腹部などにも痛みが広がることがある。
狭心症 歩行や作業などの運動時に、胸や肩にかけて締め付けるような痛みがある。休むと数分で症状が消失する。
夜中や明け方に胸痛で目が覚めることがある。
大動脈解離 突然の裂けるような激しい痛みが、胸や背中から腰にかけて広がる。
意識を失うときや、吐き気、腹痛をともなうこともある。
肺の病気 気胸 突然の胸痛と息苦しさが出現する。息を吸うと痛くなる。
やせた若い男性によくおこる。
肺炎 胸膜まで炎症が広がると胸痛が生じる。
熱、咳、痰などをともなうことが多い。
胸膜炎 胸の強い痛みや息切れをともなう。
深呼吸すると痛みが強くなる。咳や熱をともなうこともある。
肺塞栓症 長時間座ったあと、動いたときに突然の胸痛や呼吸困難を生じる。
神経・骨の病気 肋骨・肋軟骨骨折 動いたとき、深く息を吸うとき、咳をしたときに痛みが強くなる。
肋間神経痛 肋骨の裏に走っている神経の痛みで、痛みの範囲は狭いが強い痛みをともなう。
からだを動かすと痛みが強くなることもある。
帯状疱疹 からだの片方の肋間神経に沿って激しい痛みがでる。
痛みの範囲に水ぶくれがでることもある。
水ぶくれが治ったあとも、数か月から数年も痛みが続くことがある。
消化管の病気 逆流性食道炎 胃液が逆流することで胸やけや、締め付けられるような胸の痛みを感じる。
胃炎・胃潰瘍 みぞおちの鈍い痛みを生じるが、胸やけや胸痛をともなうこともある。
潰瘍から出血すると、吐血や便が黒くなることもある。
急性心筋梗塞や大動脈解離などは、発症すると命に直結することのある、特にこわい病気です。動脈硬化が原因になりますので、生活習慣を改善し、早めに適切なお薬を服用して、病気を予防することがとても大切です。
生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)や、動脈硬化が気になる方は、いつでもご相談ください。

動悸・息切れ

動悸とは、「普段は感じない心臓の拍動を感じること」をいい、誰にでもおこる身近な症状のひとつです。「脈がとぶ」「脈が速い」「心臓の脈を強く感じる」「ドキドキして息苦しい」など、動悸の感じ方はさまざまで、原因もさまざまです。
動悸の原因には、不整脈だけでなく、他の心臓病や、ホルモン異常なども考えられるため、原因を調べることはとても大切です。
動悸

心臓に原因がある場合

心臓以外に原因がある場合

  • 甲状腺機能亢進症・・・バセドウ病など
  • 貧血・・・出血性貧血、鉄欠乏性貧血、白血病など
  • 更年期障害
  • 心因性・・・ストレス、心配性な性格など

どのような検査をするの?

血液検査、長時間心電図検査、心臓超音波(エコー)検査などで、迅速に診断することができますので、いつでもご相談ください。

心臓の雑音を言われたことがある

心雑音とは、聴診器を胸にあてたときに聴かれる心臓の音をいいます。健康な人でも聴かれることがありますが、代表的な病気として、心臓の弁に異常がおこる心臓弁膜症があります。
心臓弁膜症は、症状がでにくく、医療機関にかかっていても気づかれず、知らないうちに進行していくことがあります。
疲れやすい、息切れがする、手足がむくむなどの原因が、心臓弁膜症ということもあります。
心臓超音波(エコー)検査で診断し、早めの対応をすることで、心不全などの重大な病気を予防できますので、気になる方はご相談ください。

足がだるくなる、足が痛くなる、足が冷たい

歩くときや走るときに、足(特にふくらはぎ)がだるく・痛くなるため途中で休まないと動けない、などの経験はありませんか?
冬でもないのに、いつも足が冷たく指先の色が悪い、などの症状はありませんか?
このような症状は、足の血流が悪くなる「閉塞性動脈硬化症」という病気が原因である可能性があります。
閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化により足の血管が狭くなることで起こります。そのため、動脈硬化の原因となる生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)をお持ちの方や喫煙をされる方はリスクが高くなります。
足の血圧測定や超音波(エコー)検査で診断できますので、足の症状が気になる方はご相談ください。

足のむくみ

むくみを日常的に感じる方はたくさんおられると思います。足のむくみは、血液が足に溜まることで生じます。足の血液は、重力に逆らって心臓へ戻る必要があり、このときに活躍するのが第2の心臓と言われるふくらはぎの筋肉です。ふくらはぎを使わないと血液が足に溜まり、むくみを生じます。運動量の少ない高齢者や、筋肉量の少ない女性がむくみやすいのはこのためです。
むくみの原因はさまざまで、生活習慣によるものや、心臓や腎臓などの病気によるものがあります。

生活習慣が原因のむくみ

  • 同じ姿勢を長時間続ける・・・立ち仕事やデスクワークなどで、足を動かさないため
  • 塩分のとりすぎ・・・塩分を取りすぎると、体内の塩分濃度を薄めようと水分がたくさん吸収されるため
  • 運動不足・・・第2の心臓である、ふくらはぎを使わないため

病気が原因のむくみ

  • 心臓病・・・心臓のポンプ機能が低下することで、全身の血流が悪くなるため
  • 肝臓病・・・からだの栄養バランスが悪くなるため
  • 腎臓病・・・からだの栄養分が極端に失われる、不要な水分を体外にだせなくなるため
  • 深部静脈血栓症・・・長時間同じ姿勢でいることで、足の静脈に血栓を生じ血流が悪くなるため
慢性的なむくみは、病気のサインかもしれません。むくみが続くときは早めにご相談ください。

狭心症・心筋梗塞

心臓病は、日本人の死亡原因の第2位を占めます。その約半数は、「心筋梗塞」や「狭心症」などが原因です。特に、心筋梗塞は緊急度の高い病気で、発症すると約30%の人が亡くなります。
心臓は、全身に血液を送る「ポンプ」の役目をしています。ポンプを動かし続けるためには、心臓に絶えず血液を送って酸素や栄養を供給しなければなりません。その血液を供給するのが、心臓を取り囲んでいる「冠動脈」という血管です。この冠動脈が、狭くなり充分な血液を供給できなくなるのが「狭心症」、完全に詰まり血液供給が完全に途絶えるのが「心筋梗塞」です。
胸が痛い
  狭心症 心筋梗塞
症状 運動時の胸の圧迫感、胸の痛み
安静で症状が改善する
突然の胸の痛み、冷や汗
安静にしても症状が改善しない
持続時間 数分~15分以内 30分以上
狭心症や心筋梗塞の症状は、胸痛だけでなく、腹部、肩、首、あごなどにも痛みを感じることもあります。
また、高齢者や糖尿病の方は、症状を感じにくいことがあります。
狭心症の発作は、医療機関に行くまでにおさまってしまうこともありますが、発作が再発する可能性は十分にありますので、必ず検査を受けましょう。
狭心症や心筋梗塞は、発症時期に季節性があります。真夏や真冬は少なく、むしろ季節の変わり目(急に寒くなったとき、急に温かくなったとき)に多く発症すると言われています。

危険な狭心症の症状

「発作が運動時だけでなく、安静時でも起こるようになった」「発作の頻度が増えた、発作の時間が長くなった」などの変化があるときは、不安定狭心症という心筋梗塞の一歩手前の状態である可能性があるため、早めに受診しましょう。

検査・診断

狭心症や心筋梗塞の診断には、詳しい「問診」が重要です。さらに、心電図検査、心臓超音波(エコー)検査、血液検査などで、心臓に異常がでているか調べます。
狭心症と診断したときは、薬剤治療を開始し、CT検査や心臓カテーテル検査などの詳しい検査を行うため、適切な医療機関へ紹介します。
心筋梗塞と診断したときは、ただちに心臓カテーテル検査・治療が必要なため、大病院へ緊急搬送します。

心臓カテーテル治療について

血管に針を刺して、カテーテルという医療器具を血管内へ挿入します。挿入したカテーテルを「冠動脈」の入り口に引っかけます。ガイドワイヤー、バルーン(風船)、ステントなどの医療器具を使って、冠動脈の狭い部分や詰まっている部分を治療し、血流を正常な状態へ戻します。
心臓バイパス手術と違い、メスで胸を切る必要がないため、からだへの負担がとても少ない治療法です。
心臓カテーテル治療が適さない場合は心臓バイパス手術を行う必要がありますので、しっかりと適応を見極めて治療法を選択します。
狭心症や心筋梗塞は、予防が大切です
狭心症や心筋梗塞を発症すると、心臓のポンプ機能が低下するため、心不全や不整脈などを起こしやすくなります。そうなると、入退院を繰り返すようになり、日常生活を送ることが難しくなります。
狭心症や心筋梗塞は、主に生活習慣病による動脈硬化が原因と言われているため、食事・運動習慣の見直しや薬剤治療を行うことで動脈硬化の進行を防ぐことが大切です。健診で肥満や血圧、コレステロール、血糖値の異常を指摘されたときは、早めに病院へ相談し病気の発症を防ぎましょう。

不整脈

心臓は、心臓の中を「電気の刺激」が伝わることで動いています。電気を作る「洞結節」という発電所の役割をする部分と、「伝導路」という電気を心臓全体に伝える電気回路が正常に働くことで、1分間に60~80回ほど拍動しています。
不整脈とは、何らかの理由で心臓の電気の流れがおかしくなり「心臓が正常に拍動しない状態」をいい、その原因はさまざまで、以下のことが考えられます。

期外収縮

心房性期外収縮、心室性期外収縮
脈が急に飛んで、ドキンと脈を感じることがあります。原因は、心筋梗塞、心筋症、高血圧などさまざまで、心臓の中で異常な電気が発生し、正常な脈とは別に心臓が興奮することで、脈が飛ぶ感じがします。
経過観察でよいことが多いですが、脈がとぶことによる不快感が強いときは、薬剤治療やカテーテル治療を行うことがあります。

頻脈性不整脈

洞性頻脈、発作性上室性頻拍、心房粗動、心房細動、心室頻拍、心室細動など
1分間の脈拍数が100回を超えるときを頻脈といいます。
心臓には、洞結節(発電所)で作られた電気を伝えるための伝導路(電気回路)があります。心臓の中に異常な電気回路が存在し、そこを電気がグルグル回ることで頻脈が起こります。洞結節(発電所)が異常に働くことでも起こります。
脈が速すぎると、胸痛や呼吸困難を感じたり、意識を失って命に関わることもあります。
安静にしているのに、1分間の脈拍が120回を超えるようなときは、頻脈性不整脈の可能性があります。
頻脈の種類によっては、不整脈をコントロールする薬剤治療や「カテーテルアブレーション」というカテーテル治療を行うことがあります。
短時間で不整脈が治まっても、繰り返す可能性は十分にありますので、必ず検査を受けましょう。

心房細動について

頻脈性不整脈の中で多いのが心房細動です。心房細動の主な原因は、加齢や高血圧であり、社会の高齢化とともに心房細動を患う方は増えています。
心房細動には、一時的に発作の起こる「発作性心房細動」と、長期間にわたり発作の続いている「慢性心房細動(持続性心房細動+永続性心房細動)」があります。当初は一時的であった発作性心房細動も、放置して発作の頻度が増えると、次第に慢性心房細動へ移行します。

心房細動のこわい合併症

心房細動は、自覚症状に乏しいことがしばしばですが、脳梗塞(心源性脳塞栓症)を合併することがあるため、治療が重要な不整脈のひとつです。脳梗塞の約30%は心房細動が原因と言われています。さらに、心房細動による脳梗塞は、広範囲の脳梗塞を起こすことが多く、半身麻痺や寝たきりになるなど重い後遺症を残し人生に大きな影響を及ぼします。そのため、心房細動の治療では、血栓予防の抗凝固療法が重要になります。また、カテーテル治療を行うことで、心房細動の発作を起さないようにする場合もあります。
心源性脳塞栓症によって半身麻痺や寝たきりになってしまうと、人生が180度変わってしまいます。適切に対処することで、脳梗塞を防げる可能性が高いので、健診や医療機関で心房細動を指摘されたときは、必ず病院へ相談しましょう。

徐脈性不整脈

洞不全症候群、房室ブロック
1分間の脈拍数が50回を下回るときを徐脈といいます。
心臓を動かすための「電気」を作る洞結節(発電所)の機能が悪くなった場合や、電気を伝える電気回路が断線することで脈が遅くなります。脈が遅くなりすぎると、脳への血液が充分に届かないため、ふらつき、めまい、倦怠感、意識消失などの症状が出ます。特に、意識消失すると、転倒による骨折や運転中の交通事故など、とても危険な状況に至ることがあります。
徐脈の原因は、加齢による洞結節や電気回路の機能不全が多いため、治療は「ペースメーカー」手術を行います。

カテーテルアブレーションとは

血管に針を刺して、カテーテルという医療器具を血管内へ挿入します。挿入したカテーテルを心臓の内側へ密着させ、50度くらいの熱を使って異常な電気回路を焼き切る血管内手術です。
異常な電気回路を焼き切ることで、不整脈を起こしにくくすることができます。

ペースメーカー手術とは

ペースメーカーとは、500円玉大のペースメーカー本体と、本体から心臓へ電気刺激を伝えるリード線で構成されています。本体には、電池と電子回路が内蔵されており、本体からリード線を通じて心臓へ電気刺激を送ることで、心臓が長時間停止するのを防ぎます。
ペースメーカー本体は、鎖骨の少し下の皮下へ植え込み、静脈内を通って1本または2本のリード線を心臓の内側へ装着します。
手術は局所麻酔で行い、出血はほとんどなく、からだへの負担も少ないです。手術後は、半年ごとにペースメーカーチェックを行い、異常の有無や電池寿命を調べます。平均7~8年で電池寿命を迎えますので、電池寿命のたびにペースメーカー本体を入れ替える手術をします。電池の充電はできません。

心臓弁膜症

心臓には、血液の流れを一方向に維持し、逆流を防ぐために4つの「弁」があります。これら心臓の弁に障害が起き、本来の機能を果たせなくなった状態を「心臓弁膜症」といいます。
心臓弁膜症には大きく2つの種類があります。弁の開きが悪くなって血液の流れが妨げられる「狭窄症」と、弁の閉じ方が不完全となり血液が逆流する「閉鎖不全症」2種類です。
心臓弁膜症の主な原因は、動脈硬化による「弁」の硬化なため、社会の高齢化とともに患者数は増加しています。

主な心臓弁膜症

大動脈弁狭窄症

大動脈弁は、心臓から全身へ送り出される血液が最初に通る、心臓の出口にある「弁」です。大動脈弁が開かないと、心臓から全身へ充分な血液を送り出すことができなくなり、心臓自体や脳の酸素不足を起こします。特徴的な症状は、胸痛、失神、息切れです。

僧帽弁狭窄症

僧帽弁は、左心房と左心室の間にある弁です。僧帽弁が開かないと、左心房の圧力が高くなり、心房細動を起こす原因となります。左心房のなかで血栓ができやすくなり、脳梗塞を起こすこともあります。心不全を起こすと、動悸、息切れ、手足のむくみを生じます。

大動脈弁閉鎖不全症

大動脈弁の閉まりが悪いため、大動脈へ送り出された血液が心臓へ逆流します。逆流した分、心臓への負担が増すことで心臓が大きくなります。心不全を起こすと、動悸、息切れ、手足のむくみを生じます。

僧帽弁閉鎖不全症

僧帽弁の閉まりが悪いため、左心房から左心室へ送り出した血液が逆流します。左心房の血液量が増加することで左心房が拡大し、高頻度で心房細動を合併します。

心臓弁膜症の検査・治療

心臓弁膜症の診断には、「問診」と「聴診」が重要です。動悸や息切れなどの自覚症状の聞き取りを行い、聴診で心雑音をチェックします。心臓弁膜症が疑われたときは、心臓超音波(エコー)検査で、心臓弁膜症の進み具合(重症度)を調べます。
病状が軽いときは、食事療法や薬剤投与で経過を診ていきます。定期的に心臓超音波(エコー)検査を行って、病状の進み具合をチェックすることがとても大切です。
病状が重いときは、動きの悪くなった「弁」を手術で治療します。自覚症状がないときでも、からだへの負担が少ないうちに、早めの手術を考えることがあります。
心臓弁膜症は、気づかれることなく進行することが多いため、心臓専門医による早期発見・定期的な病状観察・早期治療がとても大切です。

心不全

心臓は、血液を全身に送る「ポンプ」の働きをしています。何らかの理由で、心臓のポンプとしての機能を失った状態を「心不全」といいます。ポンプ機能が悪くなることで、充分な血液を全身へ届けることができなくなります。こうなると、全身の臓器に血液が行き渡らなくなるだけでなく、からだ中に余分な水分が溜まり、さまざまな症状が出ます。

心不全の代表的な原因

  • 虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)
  • 高血圧
  • 心臓弁膜症
  • 心筋症
  • 不整脈
これらの原因のなかで、虚血性心疾患、高血圧、心臓弁膜症が多く、近年では虚血性心疾患の割合が増えています。

心不全の代表的な症状

腎臓へ充分な血液が届かないことで腎臓の機能が低下するために、尿量が減り、からだの水分量が増えます。そのため、短期間で体重が増え、足のむくみ(浮腫)が現れます。からだの水分量が増えすぎると、肺に水が溜まるため、息切れや呼吸困難を生じます。歩くと息が切れ、肩で息をしたり、動悸を感じるようになります。
病状が悪化すると、横になると息苦しさが強くなるために、夜寝るときに横になれず、座った姿勢でいるようになります。これを「起座呼吸」といいます。

心不全の検査・治療

心不全の診断には、問診により病状の経過を把握し、全身を診察することが大切です。一般的な検査は、レントゲン検査、血液検査、心電図、心臓超音波(エコー)検査を行い、速やかに心不全の原因を調べます。
病状が軽いときは、塩分・水分制限や飲み薬を使った外来治療を行いますが、病状が重いときは、酸素投与や点滴治療が必要となるため、入院治療を行います。
心不全は予防が大切です
心不全は、一度発症すると何度も繰り返す(再発)ことがあり、再発のたびに病状が悪くなる病気です。
そのため、心不全の発症を予防することや、再発させないことがとても大切です。
心不全を患った方は、たくさんのお薬を飲む必要がありますが、薬剤治療を継続して再発予防することが重要です。
最大の原因である虚血性心疾患を予防するには、動脈硬化を防ぐことが大切です。動脈硬化の原因である生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)にならない生活を心がけ、健診などで異常を指摘されたときは早めに病院へ相談しましょう。

大動脈瘤・大動脈解離

大動脈とは、心臓から送り出された血液が通る、からだで最も太い血管です。樹木の枝のように、大動脈からさまざまな血管が枝分かれして、全身へ血液を運んでいます。この大動脈がふくらんでコブができる病気を「大動脈瘤」、動脈の壁が裂ける病気を「大動脈解離」といいます。

大動脈瘤

大動脈瘤は、大動脈の壁が弱くなっている部分がふくらんでコブができます。
動脈硬化、高血圧、喫煙、遺伝などさまざまな原因が関係しています。
無症状のまま大きくなることがほとんどで、レントゲン、CT、超音波(エコー)検査などで偶然見つかることが多いです。
大動脈瘤は、大きくなると破裂のリスクが高まりますので、病院へ通院し定期的に検査を受けることが大切です。
血圧が高いと、動脈瘤に強い圧力がかかることでコブが大きくなるため、できる限り血圧を低く保つようにします。減塩を心がけた食事や降圧薬での薬剤治療が重要です。
大きくなったときは、破裂を防ぐために外科手術やステントグラフトによる血管内治療を行います。
適切なタイミングで手術をすれば、成功率は高く、完治が期待できます。

大動脈解離

大動脈の壁は、内膜、中膜、外膜の3層構造になっています。中膜が、何らかの理由で裂け、大動脈内に2つの通り道ができる状態を大動脈解離といいます。原因は、動脈硬化、高血圧、喫煙、遺伝などさまざまです。
ほとんどの場合で前兆がなく、突然、胸や背中に激痛が起こります。血管内の壁が裂けると、裂けた部分の血管壁は薄くなるため、破裂するリスクがとても高くなります。心臓に近い部分の大動脈が裂けたときは、48時間以内に半数の方が亡くなります。
動脈硬化や高血圧をお持ちの方で、突然、胸や背中に激痛が走ったときは、大動脈解離の可能性がありますので、ただちに病院を受診しましょう。治療は、外科手術やステントグラフトによる血管内治療を行います。 

閉塞性動脈硬化症

閉塞性動脈硬化症とは、動脈硬化によって足の動脈が細くなったり(狭窄)、詰まったり(閉塞)する病気で、足にさまざまな症状がでます。
動脈硬化の原因である、高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙習慣などが、閉塞性動脈硬化症の発症に大きく影響します。

閉塞性動脈硬化症の症状

症状は、主に4段階に分けられます。
ステージⅠ・・・足の冷え、しびれ
ステージⅡ・・・一定の距離を歩くと、足のだるさや痛みを生じて歩けなくなるが、休むと再び歩ける(間欠性跛行
ステージⅢ・・・安静時でも痛みがある
ステージⅣ・・・足に壊死や潰瘍を生じる
病院を受診するときで、最も多い症状は、「間欠性跛行」という歩行時の足のだるさ、痛みです。

閉塞性動脈硬化症の検査・治療

足の診察で動脈の拍動(脈拍)を確認し、超音波(エコー)検査や足の血圧測定をします。痛みをともなわず、速やかに診断することができます。
閉塞性動脈硬化症の治療は、動脈硬化の原因である生活習慣病の治療が最も重要です。そのためには、食生活・運動習慣の見直しや、薬剤治療による血圧・脂質・血糖の管理が大切です。タバコは血管を収縮させて血流を悪くするため、禁煙も大切です。
運動はとても重要であり、ウォーキングを積極的に行うことで、足の血流を増やします。さらに、薬剤治療で、足の血流を改善させます。
バルーンやステントを使ったカテーテル治療や、バイパス手術などの外科的治療を行うこともあります。

カテーテル治療について

血管に針を刺して、カテーテルという医療器具を血管内へ挿入します。挿入したカテーテルを、治療する場所まで進めます。ガイドワイヤー、バルーン(風船)、ステントなどの医療器具を使って、動脈の狭い部分や詰まっている部分を治療し、血流を正常な状態へ戻します。

日常生活での注意点

足の血流が悪いと、神経が鈍くなってケガをしても気づきにくくなります。さらに、血流が悪いことでケガが治りにくくなります。
足に傷がないか、色が悪くないかなどをチェックし、足の裏や指の間もきちんと洗い清潔に保つようにしましょう。
足を守るため、自分にあった靴を履いて、サンダルなどで外出しないようにしましょう

深部静脈血栓症

深部静脈血栓症とは、主に足の静脈に血の塊(血栓)ができる病気です。
ふくらはぎや、足の表面の静脈に血栓ができても大きな問題になりにくいのですが、膝より上の静脈(腹部~大腿部)に血栓ができると危険になることがあります。できた血栓が血液に流されて肺に向かうと、肺の血管が詰まって肺塞栓症を発症することがあります。肺塞栓症とは、「エコノミークラス症候群」と呼ばれることもあります。

深部静脈血栓症の原因

血流の流れが悪い、血液が固まりやすいという状態が続くと、体のなかで血栓が形成されやすくなります。

血液の流れが悪くなる例

  • 入院などで寝ている時間が長く続いたとき
  • 飛行機や長距離バスで長い時間座ったままでいるとき
  • 骨折などでギプス固定をしているとき
  • 妊娠中の方や子宮筋腫などがある方

血液が固まりやすくなる例

  • がんを患っている方
  • 膠原病や炎症性腸疾患などの慢性的に体のなかで炎症が起こっている方

深部静脈血栓症の症状

足に血栓が形成されると、足の腫れや痛み、皮膚が赤黒くなるなどの症状が、数日間という比較的短期間で出現します。ただし、数か月かけてゆっくりと血栓が形成されることもあり、その時は症状が弱いこともあります。
足で形成された血栓が、肺に飛んでいき肺の血管が詰まる肺塞栓症を発症したときは、突然の息切れ、呼吸困難、胸の痛み、血圧の低下など重篤な症状が急激におこり、最悪の場合は突然死することもあります。

深部静脈血栓症の検査

深部静脈血栓症の検査は、超音波検査や血液検査で血栓の有無を調べます。特に超音波検査は、痛みを伴うことなく迅速な血栓の評価に適しています。

深部静脈血栓症の治療

できた血栓を溶かすことが主な治療になります。まずは飲み薬で治療を始めることがほとんどですが、血栓の量が多いときや、肺塞栓症を合併しているときは点滴治療やカテーテルを使った治療が必要になることもあります。
深部静脈血栓症を防ぐために・・・
深部静脈血栓症を発症する方の多くは、発症前にあまり動かず同じ姿勢でいることがほとんどです。
近年では、感染症を防ぐために自宅で過ごす時間が多いと思います。特にご高齢の方は、テレビを見ながらで構いませんので足踏みをしたり、ふくらはぎをマッサージするなど少しでも足を動かさない時間を減らすことで予防できます。
若い方でも、ベッドでなくソファーで変な姿勢で寝る習慣がある方が深部静脈血栓症を発症したり、妊娠中の女性が、つわりが酷くて水分を摂れずに動けない状況が続いたことで深部静脈血栓症を発症した方もいます。
このように年齢に関係なく発症する可能性のある病気ですが、日常生活に少し気をつけるだけで予防ができます。足の腫れが気になるときや、深部静脈血栓症について気になるときはお気軽にご相談ください。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に呼吸が止まってしまう病気です。無呼吸によって、からだの酸素濃度が低下する低酸素状態になるため、睡眠の質が悪くなり昼間の眠気につながります。さらに、心臓、脳などの重要臓器に負担をかけるため、高血圧、心臓病、脳血管疾患、不眠症などの病気を引き起こすといわれています。
睡眠時無呼吸症候群は、太った中年男性に多いイメージがあると思いますが、痩せている方や女性でも発症します。首が短い、首が太い、下あごが小さい、歯並びが悪いなどの特徴がある方は注意が必要です。
睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群の症状

  • 睡眠中・・・いびき、息が止まる、何度も目が覚める、寝汗をかく、歯ぎしり
  • 起床時・・・頭痛、熟眠感がない、寝起きが悪い、からだが重い
  • 日中・・・ひどい眠気、集中力の低下、疲労感
睡眠不足による昼間の強い眠気のため、日中の判断力や集中力低下から作業効率が悪くなります。居眠り運転を起こす可能性も高くなり非常に危険です。

睡眠時無呼吸症候群の検査・治療

ポリソムノグラフィー(PSG)検査で、入眠中の睡眠状態を評価します。当院では、簡易PSG検査機器を貸し出しており、ご自宅で検査可能です。
治療は、CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)を行います。入眠中に鼻や口にマスクを装着し、気道に空気を送り込んで無呼吸を防ぎます。機械はコンパクトなので、出張や旅行に持ち運びできます。

循環器内科での検査

  • 超音波エコー検査
  • 心電図
  • 24時間心電図
  • 血圧脈波検査(ABI)
  • レントゲン検査
  • 血液検査・尿検査