生活習慣病

高血圧症

高血圧症の基準は年齢や持病によって異なりますが、病院で140/90mmHg以上、自宅で135/85mmHg以上の状態を指します。
血圧の高い状態が続くと、心臓や動脈に強い圧力がかかり続けるため、心臓の筋肉が肥大して心臓が大きくなったり、動脈が硬くなる動脈硬化を引き起こします。
高血圧症

高血圧症の症状

多くの場合、症状はありません。血圧が高いことで、頭痛、めまい、鼻血などの症状がみられることもあります。自覚症状に乏しいため、いつの間にか動脈硬化が進行し、心臓病、脳卒中、腎臓病などの重大な病気につながることがあります。

高血圧症の原因

本態性高血圧

塩分のとりすぎ、肥満、ストレスなど生活習慣が関係するものを本態性高血圧症といいます。
本態性高血圧の多くの原因は、食事での塩分のとりすぎです。
塩分の摂取状況を尋ねると、多くの方が「そんなに塩分とっていないと思うよ?」と言われます。しかし、問診で詳しく食事内容を尋ねると、毎食ごとに味噌汁を飲んでいたり、うどんやラーメンのスープを飲み干していたり、総菜パンをよく食べていたりと、思っている以上に塩分をとっていることが多いのです。
減塩を意識した生活習慣を身に着けることが、高血圧の治療でとても大切です。

早朝高血圧・夜間高血圧

人の血圧は、活動する昼間に高く、夕方から夜にかけて下がります。翌日、再び起きて活動するために、寝ている早朝から朝にかけて上がっていきます。
ところが、この朝の血圧上昇が急激な場合を「早朝高血圧」、夜中も血圧が下がらない場合を「夜間高血圧」といいます。早朝高血圧や夜間高血圧の方は、夜中から明け方にかけて心臓や脳に大きな負担がかかるため、入眠中に脳卒中や心筋梗塞などを発症するリスクが高まります

昼間高血圧

職場などストレスを感じやすい環境にいることで、昼間だけ血圧が上がることがあります。これを「昼間高血圧(職場高血圧)」といい、特定の環境下でのみ血圧が上昇するため、病院を受診しても血圧は下がっていることが多く、気づかれにくい仮面高血圧のひとつにあたります。
診断が遅れると、動脈硬化の進行につながりますし、ストレスによる血圧の急変動で脳卒中や心筋梗塞などの引き金になることも少なくありません。

二次性高血圧

何らかの原因で二次的に血圧が上がるものを二次性高血圧といいます。
その理由は、副腎に腫瘍ができたり、腎動の動脈が狭くなることで、血圧を調整するホルモンの分泌が異常になるためです。これらの病気は、超音波(エコー)検査や血液検査で診断をつけることができます。

高血圧症の治療

高血圧の治療は、とにかく減塩が大切です。しかし、毎日の食事で減塩を徹底することはとても難しいです。
ただ「塩分を控えましょう」と言うのではなく、患者様ひとりひとりのライフスタイルに合わせた減塩方法を一緒に考え、少しずつ改善していくことが大切だと考えています。運動を心がけることもとても大切です。 その上で、適切な薬剤治療を行って、動脈硬化による恐ろしい病気を予防することが重要です。
一度、薬剤治療を始めると一生続けなければならなくなると思っている方がいらっしゃいますが、そんなことはありません。減塩や運動を頑張って、少しずつお薬を減らしていき、薬剤治療を終了することに成功する方もいらっしゃいます。
高血圧症は、動脈硬化を進行させる恐ろしい病気ですので、動脈硬化を予防するために早め早めに対処することが重要です。薬剤治療が必要なときは、お薬に対して抵抗を持たず、お薬の助けを借りて上手に病気と付き合うことが大切です。
自分の血圧を知りましょう
多くの方は、自分の血圧がどのくらいなのか知らずに生活していると思います。健康診断や、たまたま病院を受診したときに、初めて自分の血圧が高いことに気づく方が少なくありません。
血圧が高くて良いことはひとつもありません。家電量販店、フィットネスジム、温泉施設などで血圧計を目にしたら、測って自分の血圧を知ってください。もし、135/85mmHg以上あったときは、高血圧症かもしれません。早めに対処することがとても大切ですので、お気軽にご相談ください。

糖尿病

人が生きるために必要な栄養素のひとつに「糖質」があります。糖質は、食事をすることでからだに吸収され、血糖となります。この血糖を一定の数値でコントロールするために重要なのが、すい臓で作られる「インスリン」というホルモンです。糖尿病とは、インスリンの作用不足により、血糖が高くなる状態をいいます。
糖尿病には、大きく2つのタイプがあります。

1型糖尿病

すい臓でインスリンがほとんど、またはまったく作ることができないため、血糖が異常に高くなります。
糖尿病の患者様のうち、10人に1人もいません。
若い方の糖尿病では1型糖尿病が多いですが、年齢や生活習慣に関係なく発症します。
治療は、皮下注射によってインスリンを体内へ補充します。

2型糖尿病

2型糖尿病は、すい臓でインスリンを作る量が十分でない「インスリン分泌不全型」と、作られたインスリンが十分に作用しない「インスリン抵抗型」があり、インスリンの作用不足によって血糖が高くなります。糖尿病患者様の10人に9人以上が2型糖尿病です。若い方でも発症しますが、40歳以上で発症する場合がほとんどです。
2型糖尿病の原因は、糖質のとりすぎの食生活、肥満、運動不足、遺伝などがあります。
2型糖尿病の初期は、ほとんど自覚症状がありません。血糖が高いまま放置すると、徐々に全身の血管や神経が傷害されて、さまざまな合併症を引き起こします。

2型糖尿病による合併症

2型糖尿病は、以下のような恐ろしい合併症を引き起こすことがありますが、きちんと血糖をコントロールすれば、合併症を予防できることがわかっています。そのため、しっかりと治療を行い、血糖を下げることが大切です。

糖尿病性網膜症

網膜の細い血管が障害され、視力が低下し、最終的に失明することがあります。

糖尿病性神経障害

手足の神経に異常をきたし、手の指や足の先・足の裏にしびれや感覚異常があらわれます。

糖尿病性腎症

腎臓の細い血管が障害され、腎臓の機能が低下します。進行すると、尿として老廃物を排泄する腎臓の機能が失われるため、最終的に人工透析治療が必要になることがあります。

動脈硬化性疾患

心臓や脳血管に動脈硬化が起こるため、心筋梗塞や脳卒中を引き起こします。足の動脈硬化によって閉塞性動脈硬化症を引き起こします。足の血流が悪くなりすぎると、足が腐ってしまい足を切断することがあります。

2型糖尿病の治療

2型糖尿病の治療は、食事療法、運動療法、薬剤療法の3本柱で行います。なかでも、食事療法が最も重要であり、薬剤療法を行っていても必ず食事療法を行わなければなりません。
食事療法がおろそかになると、お薬の効きが悪くなり、血糖が安定しなくなります。
インスリン使用量が増えすぎると太りやすくなります。太るとインスリンの効きが悪くなるため、さらにインスリン使用量が増えてもっと太る、という悪循環に陥ることもあります。
最近では、さまざまな糖尿病治療薬が登場したため、薬剤治療の副作用である低血糖を起こしにくくなり、血糖のコントロールがしやすくなってきました。食事療法、運動療法を基本にして、適切な薬剤療法を行うことでしっかりと血糖をコントロールしましょう。

脂質異常症

人が生きるための栄養素のひとつに「脂質」があります。脂質には、LDL(悪玉)コレステロール、HDL(善玉)コレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)があり、血液中の脂質値が基準から外れた状態を脂質異常症といいます。脂質異常症は動脈硬化の進行と大きく関連し、心筋梗塞や脳卒中などの恐ろしい病気のリスクを上昇させます。
【脂質異常症の基準値】
LDLコレステロール 140mg/dL以上 高LDLコレステロール血症
120~139mg/dL 境界域高LDLコレステロール血症
HDLコレステロール 40mg/dL未満 低HDLコレステロール血症
トリグリセライド 150mg/dL以上 高トリグリセライド血症
non-HDLコレステロール 170mg/dL以上 高non-HDLコレステロール血症
150~169mg/dL 境界域non-HDLコレステロール血症

脂質異常症の症状

脂質異常症は、症状がまったくないため、血液検査をしなければ気づくことができません。健康診断でコレステロール値がよくないと言われても、症状がないため放置している方も多いのではないでしょうか。
ここが脂質異常症の恐ろしいところで、知らない間に動脈硬化を進行させることになります。

脂質異常症のタイプ

高LDLコレステロール血症

食事で摂取した「脂質」は、肝臓でさまざまな種類のコレステロールに合成され、必要な栄養として全身へ運ばれます。LDLコレステロールは、これらのコレステロールを全身に運ぶ役割を担っており、必要なコレステロールです。しかし、血液中のLDLコレステロールが増えすぎると血管に蓄積し動脈硬化の原因となるため、悪玉コレステロールと呼ばれています。LDLコレステロールが140mg/dL以上の場合は、高LDLコレステロール血症といい、何年も高い状態だと動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中を発症するリスクが高くなります。

低HDLコレストロール血症

HDLコレストロールは、血液中の余分なコレストロールを回収する血管の掃除屋であり、動脈硬化を抑える役割があるため、善玉コレステロールと呼ばれています。LDL(悪玉)コレステロールの量が正常でも、HDL(善玉)コレステロールが少ないと、血管の掃除を十分にできなくなるため、動脈硬化が進行します。

高トリグリセライド血症

トリグリセライドとは中性脂肪のことです。中性脂肪は重要なエネルギー源ですが、とりすぎると体脂肪として蓄えられて肥満をまねき、生活習慣病を引き起こします。血液中に中性脂肪が多いと、血液がドロドロになるため体の隅々まで栄養や酸素が運ばれず、健康面や美容面で影響を及ぼします。

脂質異常症の治療

高LDLコレステロール血症

LDL(悪玉)コレステロールを下げるには、飽和脂肪酸のとりすぎを減らすことが大切です。飽和脂肪酸とは、脂身、バター、ラード、生クリームなどに多く含まれ、冷蔵庫で固まっている油であることが多いです。その他にインスタントラーメンなどの加工品、イクラや明太子などの魚卵や、鶏卵の黄身にも多く含まれますので、これらを減らすことでLDL(悪玉)コレステロールの低下が期待できます。食物繊維や青魚を積極的に食べ、運動をすることも大切です。それでも改善が乏しいときは、薬剤療法を併用することで治療します。
一度、薬剤治療を始めると一生続けなければならなくなると思っている方がいらっしゃいますが、そんなことはありません。食事療法や運動を頑張って、少しずつお薬を減らしていき、薬剤治療を終了することに成功する方もいらっしゃいます。
当院では、どのような食事に注意すればよいかなどのアドバイスを行っておりますので、お気軽にご相談ください。

低HDLコレストロール血症

HDL(悪玉)コレステロール値はトリグリセライド(中性脂肪)値と連動することが多いため、トリグリセライドを下げることでHDL(悪玉)コレステロールの上昇が期待できます。
HDL(悪玉)コレステロールを上げるお薬はありませんので、運動を積極的に行うことが大切です。

高トリグリセライド血症

トリグリセライドが上がる要因としては、甘いもの、油ものの摂りすぎが挙げられます。そのため、食べすぎをやめ、体重を落とすことが大切です。また、青魚に含まれる多価不飽和脂肪酸にはトリグリセライドを下げる効果があります。
食事や運動でも下がらないときは、薬剤療法を行います。

定期的な血液検査を受けましょう

脂質異常症は、症状がないため気づかないことが多いです。自分が脂質異常症であることに気づかずに過ごしていると、知らぬ間に動脈硬化が進行し、ある日突然、心筋梗塞などの恐ろしい病気を発症します
会社で現役のときは定期健診を受けていても、定年後は健診を受けていないという方も少なくないのではないでしょうか。脂質異常症は血液検査をすれば診断ができますので、最低でも年1回は必ず健診を受けましょう。